今後の医師・医療との付き合い方(診療所だより2月号より)
はじめに4月以降の診療所の体制について、皆様に多くの御心配をおかけしている事をお詫びします。ただ町が医療や診療所についてどう考えどのような体制をとるか、私(診療所医師)にも想像ができません。
4月から誰かここに赴任するか、週2~3回の医師派遣での対応となるか分かりませんが、地域の医療を守るため、今後来る医師を守るため、皆さんにお願いすることがあります。それは「前と同じようにやってくれ」とは間違っても言わないでくださいという事です。
医師に求める前に、
「自分達はこんな形で暮らしていきたいから応援してくれ」「自分達はこうやって頑張っているから一緒にやろまい!」と言ってあげてください。過疎化高齢化の進む地域で、それでもここで暮らしていきたいと願い、そのために何が必要で何を行動しているのか、その「思い」や「志」を医師に話し
共にやろうと誘ってあげて下さい。
医師などの専門職・技術職は能力を活かし人や地域のため貢献したい思いを根底に持っています。しかし地域がどうありたいのか、住む人が何をしたいのか、それが伝わらなければここを選んで働く理由はありません。医療だからあって当たり前・医療は医師に任せておけばよい、そんな地域では赴任する医師も不幸です。子供も同じ、昔なら家を継ぐ・親が倒れたという理由で帰ってきました。しかし少子化が進み価値観の変わった現代では、ここで暮らしたい思いがなければ子供すらここに住むことはありません。子供達は正直です。何が悪いかも言わず静かにこの土地を去っていきます。
一方都会と違う田舎に魅かれる価値観もあります。地域の魅力を皆さんが感じ、それを活かしここで暮らすという思いや行動を発信していく事で、「志」に共鳴しここに来る仲間がいるはずです。
この先はおそらく1~3年程度で医師が交互に変わっていくことになるでしょう。でも医師が変わっても医療が続けばいいのです。
どんな医師が来ても自分達はこうしたいから一緒にやろうと、そう呼びかけられるレベルの地域になってください。
真剣に生きる人を診た医師は患者さんや地域からいろいろなことを学びます。赴任地が変わっても頑張る人や地域を支える医療を展開します。私も医師として大事な時期をそのような場所で過ごし、患者さんや地域の人に教えられて今の自分がいます。津具の皆さんは元気な人も病気の方もみんな一生懸命に生きる姿を持っています。年を重ねても畑をやったり、口が達者なうちはそれを活かして人を支えたり、家で死にたいから救急車は呼ばないでくれと言ったり、みんな真剣に生きています。それらの『価値』を認識して、今後来る医師にその生き様を教えてあげてください。
津具を経験した医師が各地の地域医療を支える、そう言われるよう頑張ってください。
みんないずれは死ぬのです。時の変化を考えず今と同じ状態が続けば良いというのは不可能です。この先どうやって医療を考え医師と付き合っていくか、それはひとえに皆さんがどう生きてどう死にたいという思いや行動そのものではないでしょうか。医師が変わっても医療が続いていくために、今ひとつ階段を上る時と思ってお考え頂けたら幸いです。
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