以前少し書きましたが、中村仁一さんの『大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ』を読みました。中村さんは今でも老人ホームで診療にあたられ、多くの方の最期を看取られています。
人間誰もいずれ死を迎えます。これは医療が発達しても変えられません。今の世は人が老いて死を迎える経過になかなか出会えません。病に倒れれば病院に入り、普段の生活と隔絶された場所で死んでいく、世間の人たちが老いや死を教えてもらう機会が少なくなったのです。医療に頼り「死ねない」状況になることがどういう意味を持つのか、それは自分がそうなったとしても家族がそうなったとしても、いろいろ考えよく知っておかなければなりません。
老いを受け入れ最期(死)を周りに看取らせることが人生最後の務めというのは、地域医療に携わっているなかで強く感じます。津具の在宅死も亡くなった大ばあさんの周りで子供が走り回る姿を見て始まりました。死生観の問題を地域に伝えることは難しいのですが、そういう思いをわかりやすく言葉にしてあります。生きることや死ぬことについてまだまだ消化するには時間はかかると思いますが、今後も考えていくのに大きなヒントになる本と出会えました。
この本からは、死について考えることで今の生を精一杯生きようという思いを強く感じます。死について語りながら生についてさらに深く語られています。まだまだ自分には時間があると思いながら、この本を読み進める中でやりたいこと・やらなければならないことをどう進めていくか、残り時間を有意義に使うこと・精一杯生きることについていろいろ考えるきっかけになりました。
正直この本は傑作だと思います。社会資源・医療資源の乏しい奥三河地域で今後も生きていくには当然リスクもコストも覚悟も必要です。そんなこの地域の人たちにぜひ読んでもらいたい。腹を据えて今後もここで生き抜いていただくために、きっと心強い心の支えとなってくれる教科書となると思いました。強くお勧めさせていただきます。